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ゼファーガーデン(the zephyr garden)

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レジー・ミラーは優勝こそ勝ち得なかったものの誰よりもカッコ良かった

レジー・ミラーは優勝こそ勝ち得なかったものの誰よりもカッコ良かった_d0059577_18534441.jpgNBA2004-05シーズン、一人の選手がコートを去った。
インディアナ・ペイサーズ31番レジー・ミラー。
最後となった試合はプレーオフ、イースタンカンファレンスファイナルだった。
対戦相手は因縁のあるデトロイト・ピストンズであった。
彼が今シーズン限りでの引退を表明していたためこのプレーオフでもシリーズを負ければそれで引退という図式になっていた。

ペイサーズはなんとか東地区の決勝にまで進み善戦を重ねたが昨年の王者は強かった。
じわじわと差が開き地元インディアナでシリーズ敗退を意味する4敗目のブザーが近づく。
ミラーがベンチへと退く。ペイサーズが白旗を揚げた。
アリーナは詰め掛けたファンからの大声援に包まれる。
「one more year!!」
「thanks, Reggie」
「we love you, Reggie!!」
様々なボードに込められたメッセージは彼に対するものがほとんどだった。
ミラーが交代する間に敵将ラリー・ブラウンはタイムアウトを要求。
ミラーへの拍手を送る時間を作った。
それは長年同一チーム一筋に努めてきた選手への敬意であり、また元教え子に対する慈しみの気持ちだった。
敵チームであるピストンズのメンバーも全員がペイサーズベンチに近寄り拍手を送る。
ペイサーズベンチには大粒の涙を浮かべるレジー・ミラー。
右手で拳を握り胸にあて、左手を大きく掲げ声援に応えた。
勝負を左右する大事な場面にめっぽう強く数々の伝説を作り上げ、またマイケル・ジョーダンと長年名勝負を繰り広げた90年代を代表する3ポイントシューター最後の勇姿だった。



涙が止まらなかった。
初めてバスケットの観戦で涙した。
生中継で見ていたのもあったのかもしれないが、ここまで感慨深い試合はNBAを本格的に見続けた約8年間で初めてだった。
近年では選手が同一チームに引退まで留まるケースは非常に稀で、みな金欲しさやチャンピオンリング欲しさにより高額なオファーを提示したチームや強いチームに移籍することは全く珍しいものではなくなった。
ミラーはそんな選手たちが許せなかった。
ファンのことを考えていない、と公に批判し自分自身は優勝の可能性の高くないチームへの残留を決めた。
自分の選手生命が長くないのに関わらず、である。
そして結局最後まで優勝することはなかった。

僕は声を大にして言いたい、なんてカッコ良い男なんだ!と。
他所に行ってちゃっかり優勝するくらいなら自分のチームで最後までファンのために闘った方がマシだと言わんばかりの生き様。
かつてその減らない口で多くのトラブルを生み、ブーイングされることでそれをエネルギーに替えてプレーした怒れるインディアナの男レジー。

先天的に足が曲がって生まれたせいで幼い頃は足全体を覆う金具を取り付けていないと満足に歩けなかった。
しかし少年は補助具を投げ捨てた。
年上の兄姉たちとバスケットに夢中になった。
朝から晩まで走り回った。
そうまるでフォレスト・ガンプのように。
金を取らず、環境を取らず、ただただファンのためにプレーした。
そして歳を取った。
最後までかっこ良かった、イカしてた。

レジーへ
あなたのその姿を人々は決して忘れることはないでしょう。
長い間お疲れ様でした、ありがとう。
レジー・ミラーは優勝こそ勝ち得なかったものの誰よりもカッコ良かった_d0059577_1943296.jpg

by zephyr_garden | 2005-09-04 19:49 | スポーツ
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