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ゼファーガーデン(the zephyr garden)

toughshot.exblog.jp

虎視短短ポーカー

このテーブルを離れてはいけない―
男が自分自身に、最初にそう言い聞かせてから、どれだけ時間が経っただろう。
テーブルには自分を含め四人の男女。
皆視線は合わさずとも、言葉は交わさずとも、その内に秘めた欲望を果たさんがためにグッと自分を押し殺している。

「耐えろ、まだだ…しかし顔には出すな、こらえろ…俺は負けない」

他の三人は男の心境を知ってか知らずか、やはり膠着状態を解こうとする者はいない。
あるいはこの三人の中に、その男以上に痺れを切らしている人間がいるかもしれない。
男は焦っていた。

「落ち着け、大丈夫だ。俺はまだまだいける…しかし顔には出すな、呼吸を整えるんだ…冷静さを欠いたら負けだ」

いつからか真剣勝負になっていた。
誰かがこのゲームから、いやテーブルから降りるまで、誰にも止めることはできないのだ。
切れたヤツの負け。
親も勝者もいない、だが敗者だけが存在する。
男は限界にきていた。

「頑張れ、こらえろ!もう負けっぱなしは御免だ。ここまで来たら気力で乗り切るしかない。きっと勝てる!しかしもう我慢できない、どうするっ、負けるのは御免だ。しかしもう我慢できない。どうする、負けるのは御免だ。しかし…」

長い長い沈黙の中、ついに男がテーブルから腰を上げた。
三人の視線が男に集まる。
またもこの勝負の敗者は男だった。
腰掛けたままの三人が一斉に声をかける。

「「「立ったついでに」」」

「冷蔵庫にまだ伊達巻とかまぼこあるからアンタそれ持ってきてちょうだい」
「父さんはビールおかわりー」
「お姉ちゃんに煙草よろ~」

三が日、男が一人、トイレで泣く。
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by zephyr_garden | 2007-02-15 15:06 | 雑記
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